支える方へ

うつ病の誤解

うつ病について患者さんを支える方の認識が誤っていることがあるかもしれません。
うつ病患者さんのサポートにおいて誤解しがちなことについて、一度確認しましょう。

誤解1

“ただ気分が落ち込んでいる
だけじゃないの?„

日常的な憂うつ感とうつ病の抑うつ症状は、異なります。
うつ病の抑うつ症状は生活に支障が生じるほど強く、長い間続くため、日常的に体験する憂うつ感とは異なります1)。うつ病の診断に際しては、抑うつ症状がほとんど1日中、かつ2週間以上続き、生活に支障が出ていることが基準の1つとなります2)

誤解2

“ニコニコしているし、
あの人はうつ病じゃないよ?„

見た目や言動だけでは、うつ病と判断できないことがあります。
典型的には、うつ病を発症すると口数が減る、声が小さくなる、視線が下がる、動作が遅い、周囲に無関心、表情がかたい、だるそうなどの変化があらわれます1)。しかし中には、正式な病名ではないものの、表面的には明るくふるまっているだけの「微笑みうつ病」や、不眠、食欲不振、頭や背中、腰の痛みなどの「からだの症状」が「こころの症状」より先にあらわれる「仮面うつ病」を発症している場合があります1)。どちらもうつ病の初期段階であり、重症になる前に治療することが求められます1)

誤解3

“抑うつ症状があらわれているから、
あの人はうつ病に違いない„

抑うつ症状」はうつ病だけに発生する症状ではありません。
抑うつ症状は、気分変調症、非定型うつ病、双極性障害、適応障害、統合失調症などの様々な精神疾患であらわれる症状です1、3)。また、認知症の初期症状とうつ病の症状はとても似ているため、うつ病とうつ病に似ている他の病気を、確実に見分けることが難しいのが現状です2)。抑うつ症状があらわれているからといって、身近な人を安易にうつ病と決めつけないようにしましょう。

誤解4

“休職制度を何回も使う社員が
いて悪用しているに違いない„

うつ病は再発が多い病気であるため、休職を繰り返す患者さんは少なくありません。
復帰に際し、患者さんが休職したことに対するあせりや負い目を感じ、症状が十分に回復しないまま復帰したり、復帰後に無理をしてしまうことで再発して再休職することがあります4)
職場で患者さんを支える方は、患者さんにプレッシャーを与えないことが大切です。
また、職場環境の見直しや、患者さんのペースの確認、相談への対応、病気・復帰の支援などのケアについて配慮しておくことが重要です5)。

誤解5

“復職時にはメンタルが強くなり、
何事にも対処できるはず„

うつ病の治療では、患者さんが本来もっているもろさ(うつ病になりやすい特徴:完璧主義、悩みを抱え込むなど)を変えることはできません。
そのため、患者さんが自分のペースを保てない場合、うつ病を再発してしまう可能性があります。患者さんが自分のペースを乱さないためにも、職場で患者さんを支える方は日ごろからコミュニケーションをとりましょう。もし患者さんの上司であれば、勤怠状況をこまめにチェックして、患者さんの再発のサインを見逃さないようにつとめましょう5)
また、復職プログラムなどを受けた患者さんは、以前と同じように働くことが最善ではないことを理解しているため、まわりにサポートを求めることがあります。その際、職場で患者さんを支える方は、できるだけ患者さんの求めに応えるようにしてください4,5)

誤解6

“復職したら休職前のポジションで
すぐにバリバリ働いてもらおう„

患者さんが復職する際、まずはポジションを変えず、少しずつ仕事量を増やすなど柔軟な対応をしましょう。
たとえば、休職前に管理職として役職を持っていた患者さんから役職をとってしまうことは、その患者さんにとってネガティブな要因になる可能性があるため、休職前と同じポジションで復職していただいた方がよいと考えられます。
また、復職してすぐに、患者さんに休職前と同じ働き方を求めることも、患者さんにとって大きな負担になります。そのため、職場で患者さんを支える方は、ポジションや仕事量に関する復職プランを作成し、柔軟な対応をすることが求められます5)

  • 1)野村総一郎 監修:入門 うつ病のことがよくわかる本, 講談社, 東京, 2018
  • 2)高橋三郎ほか 監訳:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル, 医学書院, 東京, 2014
  • 3)日本うつ病学会 監修:うつ病治療ガイドライン 第2版, 医学書院, 東京, 2017
  • 4)五十嵐良雄 監修:うつ病・躁うつ病で「休職」「復職」した人の気持ちがわかる本, 講談社, 東京, 2014
  • 5)山本晴義 監修:図解やさしくわかる うつ病からの職場復帰, ナツメ社, 東京, 2015